君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
「お前、傘持ってねえの?」
耳慣れたこの低い声は、あたしにとって特別な声なんだ。
だってそれは、密かに片想いしている彼、木村 凱斗(きむら かいと)の声だから。
「う、うん! 朝は降ってなかったし、持って歩くの面倒でさ」
凱斗の姿を見た途端、ヘリウムガス入り風船が膨らむように心がフワリと浮き上がる。
つられて顔まで浮かれちゃいそうになって、あたしは慌ててほっぺたを引き締めた。
去年同じクラスになって話すようになってから、ずっと持ち続けているこの気持ち。
お互い、子どもの頃から海外ミステリーのファンだったとか。
アップテンポの曲より、バラード調の静かなラブソングが好きだとか。
じつは『岩合光昭の世界ネコ歩き』の大ファンだとか。
話すたびにお互いの趣味や好みに共通点が見つかって、あたし達はおおいに盛り上がった。
凱斗と話してると、とってもワクワクする。
凱斗と一緒にいると、すごく楽しい。