君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
クラスのみんなが呼び捨てにするから、あたしも自然に『かいと』って呼び捨てにできるのが、なんだか嬉しい。
そんな気持ちが、気がついたら熱いドキドキに変わっていた。
だから、進級して今年は凱斗と別のクラスだと知った瞬間の敗北感は、すさまじかった……。
でも凱斗は廊下ですれ違ったりした時とか、いつもこんな風にあたり前みたいに話しかけてきてくれる。
こうして凱斗の姿を見てると、彼の周りだけが特別な空間に見えるから、不思議。
雨の降る薄暗い夕暮れなのに、彼だけすごくハッキリ鮮やかに見えるんだ。
「用意の悪いヤツだなあ。傘くらいちゃんと持って来いよ」
「ふーんだ。あたしは家が近いから大丈夫なんですぅー」
そんな憎まれ口を叩いている間も、あたしの心は白いピンポン玉みたいにポンポン弾んでる。
凱斗と話すたびに感じる軽やかに浮き立つ感覚が、とても好きなんだ。
「いくら近いったって、どうしても濡れるだろ? ほら」
凱斗は自分が持っている傘を、あたしに向けてちょっと傾けた。
「入れよ。家まで送るから」
大きく弾んだピンポン玉が、ポーンッと音を立ててはじけた。