君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
「このメモ、誰が書いたか心当たりないの?」
亜里沙がスカートのポケットからメモ用紙を取り出した。
「これ、事情知ってる人しか書けない内容だよね。凱斗、誰かに話したとか?」
「こんなこと誰にも話せねえよ」
「モロに悪意を感じる文面だけど、あんた誰かの恨み買ってるんじゃないの?」
「そんなヤツいねえよ。お前じゃあるまいし」
「なによそれ!」
「俺を恨む心当たりがあるとすればそれは……入江だけだ」
その深刻な声に、眉をつり上げていた亜里沙が困ったように視線を下げた。
そしてまた、あたしたちの間に沈黙が流れる。
でもすぐに凱斗が残りのコーヒーを一気に飲み干して、ガタッと立ち上がった。
「説明しろって言われたから、した。だから俺はもう帰る」
それだけ言ってカバンを持ち上げ、歩き出す姿をあたしは見上げた。