君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
「…………」
凱斗は懸命に唇を動かそうとしたけれど、でもやっぱり言葉にならなくて。
あたしと凱斗は、じっと見つめ合うだけ。
なにかを探すような頼りない視線と、行き場のない沈黙が、とても悲しかった。
結局あきらめたように視線を逸らし、なにも言えないまま凱斗は出口へと歩いていく。
あたしも無言で、お店の自動ドアから出て行く凱斗の姿を見送った。
傘を差して横断歩道を歩いていく凱斗が、大きなウィンドウ越しに見える。
青い傘と背中は人混みに紛れながら、どんどん遠ざかっていった。
「雨、止みそうにないね」
凱斗の姿が見えなくなってから、ぽつんと亜里沙がつぶやいた。
あたしは見えなくなった凱斗を追うように、身動きもせずにずっと窓の外を眺めている。
もう凱斗はいないってわかってるのに、どうしても視線を戻せない。
窓の向こうの雨降る景色は、まるで一枚の寂しい絵のように思えた。
ほんの窓ガラス一枚隔てた、現実味の薄い別世界。
たしか昨日も、そんなことを考えていたけれど。
……別世界なんかじゃない。そんなこと、決してない。