君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
一歩あるくごとにダルくて息が乱れる。なんだか頭痛もする。
完全に体調不良だ。今日一日、こんなんで無事に過ごせるのかな?
あたしは顔を顰めて、両手の指先でこめかみをグリグリしながら生徒玄関に入った。
「あ……」
呟くような小さな声が聞こえて、振り向いたあたしの目が見開かれる。
凱斗が斜め後ろで、同じように大きく目を見開きながらあたしを見つめていた。
途端にドクンと心臓が大きく鳴って、そのままバクバクと忙しく動き続ける。
今までのような、恋の素敵なドキドキだけでは済まなくなってしまった音が、体の中で悲しく響いた。
それでもやっぱり、緩く遊んだ前髪も、切れ込みの深い二重瞼の目も、少し見上げる背の高さも、あたしにとって特別だ。
周り中の誰よりもなによりも、凱斗の姿が鮮やかに見えるのは今も変わらない。
こんなにも凱斗の存在は、あたしにとって確かなもので、すごく大きいんだ。
あんな事実を知っても、今さら想う気持ちを止められないくらい。
あたしはやっぱり……凱斗が、好き……。
そんな自分の気持ちを強く思い知って、忙しく動悸を打つ胸がギュッと痛んで、切なくて……ちょっと泣きそうになった。
「凱斗、おはよう」
あたしは凱斗にぎこちなく笑いかけた。