星の砂 **海と空の秘密**
「アユミさんのことかぁ……」
「アユミさん?」
どこかで聞いたことがある。
記憶を辿ったその時、冷たい水の感覚がよみがえった。
私が初めてしおかぜに来た、あの日。
海斗にホースで水をかけられた、あの日。
海斗は私を『アユミ』と呼んだ。
「うん、そう。」
雫は近くのテトラポットに登りはじめた。
私もそれを追いかけて、テトラポットに登った。
テトラポットは、深い海の底にずっしりと沈み込み、海に馴染んでいた。
まるで海の生き物の骨のようだ。
その隙間をのぞいて見ると、ペットボトルやビニール袋などのゴミが捨てられているのが見えた。
「私、毎年ここにバイトで来てるんだけど。」
雫と私は、太陽で温められたテトラポットに座った。
そして、私は持っていた焼きそばを雫に手渡した。
そこから見た海は、幾重にも青が重なり、透き通っていた。
高い波や低い波が、次々にテトラポットへと押し寄せる。
雫は、話を続けた。