星の砂 **海と空の秘密**


「取り合いの末、海斗とアユミさんが付き合うことになったの。すっごくラブラブで、空はすごく辛そうだった。それでね、空が荒れ出して、ヤケクソで違う女の人と付き合うようになったの。」



今の状況と似ている。


私は、視線を海から雫へと向けた。



「それで、どんどん海斗と空の関係が悪くなってった。で、去年の今頃…だったかな。」



私は、焼きそばをよく噛まないまま、ごくりと飲み込んだ。


嫌な予感がした。



「死んじゃったの。アユミさん」


「えっ!?」



私は驚きのあまり、手にしていた割り箸を落としてしまった。

割り箸は、テトラポットの隙間を落ちて、暗闇に消えた。


捨てられたゴミたちと一緒になって。



「海水浴に来ていた子供が溺れる水の事故があったの。その日は、すっごく天気が良かったんだけど、いきなり雷注意報が発令されてね。アユミさんはその子を助けようとして、海に飛び込んだの。それで、子供は助かったんだけど、アユミさんはそのまま溺れて死んじゃったんだ…。」


今、自分がいるこの場所で、そんなに悲しいことがあったのだと思うと、身震いがした。

海が怖くなった。


そしてあの日、海斗が海へ入ろうとする私を、必死で止めた理由が分かった。

私とアユミさんを重ねたんだ。


昼と夜の海の顔が違うように、穏やかな海と荒れた海の顔も違う。

それは、時に人の命を奪う。


私は、再び海を見つめた。

海はただ黙って、波を打ち返すばかりだった。



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