星の砂 **海と空の秘密**
今でも思い出す、あの夏の夜の匂い。
雫と俊兄が、近くのコンビニで花火を買って来て、みんなで花火をした。
先週は海上花火大会の予定だったのだが、雨続きでついに中止になってしまった。
その花火大会を楽しみにしていた姪っ子たちのために、花火をしてやりたいという俊兄の親心だった。
騒ぐ姪たちと一緒に花火をする俊兄。
雫の相手をする空。
騒がしい俺らとは対称的な、静かな夜の海。
夜の海は一層神秘さを漂わせ、俺を不安にさせる。
俺は、1人で花火をしているアユミに近づいた。
線香花火を見つめるその横顔が、あまりにも切なく、寂しそうだった。
守ってやりたいと思った。
「そんな顔して。どした?」
俺の声に振り返った衝撃で、アユミの持っていた線香花火の玉が落ちてしまった。
線香花火の光が、砂浜にそっと消えた。
まるで、小さく儚い命のように。
「あ~あ。落ちちゃった…。 別に、何にもないよ?」
アユミは嘘をつく時、目を見ないヤツだった。
俺から視線を外すアユミを見て、俺はすぐに嘘だと見抜いた。
「嘘つけ。俺に言えないこと?」
アユミは、少し困ったような顔をして笑った。