Blue Moon
00.プロローグ
どんなに力を持つ者もいつかは陥落する時が来る。
どんなに栄えている国だっていつかは没落する時が来る。
長きに渡る争いで、今まさに、一つの国が終わろうとしていた。
「国王…!」
「すでに敵国の兵が城内へ…!」
「じきにこの場所へも…!」
城内は慌ただしく、人の叫び声が木霊す。
「この国ももうだめだ…。
サキ、ランを連れてどこかに隠れていなさい」
「……いいえ。
わたくしは、いつまでも貴方と…共にいます。
ですが、せめてランでも…!」
その胸の中で静かに眠る、小さな命。
騒がしく動き回る人を気にもせず、穏やかな寝息をたてている。
そんな姿を、ただ愛おしそうに見つめてから、女中へゆっくり手渡した。
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