Blue Moon
「…なんでしょうか」
付き添う女性が、訝しそうに私に言葉を返す。
鋭い視線に、負けるものかと、私は先程の鞄を差し出した。
「この荷物、貴方がたのものですよね」
その瞬間、二人の目は見開かれ、お互いに顔を合わせる。
「……もしかして、取り返してくださったのですか」
今度は男性の方が、柔らかく驚いた様子で返してきた。
「大事なものだと思ったので」
私は頷き、持っている鞄を二人へ戻す。
それは、私の手を離れ、ようやく元の持ち主のところへ帰ってくることが出来たのだ。
「――――ありがとうございました」
そして、受け取った二人の声は重なり、私の胸に静かに溶けた。