Blue Moon


「…なんでしょうか」



付き添う女性が、訝しそうに私に言葉を返す。


鋭い視線に、負けるものかと、私は先程の鞄を差し出した。




「この荷物、貴方がたのものですよね」



その瞬間、二人の目は見開かれ、お互いに顔を合わせる。





「……もしかして、取り返してくださったのですか」



今度は男性の方が、柔らかく驚いた様子で返してきた。




「大事なものだと思ったので」



私は頷き、持っている鞄を二人へ戻す。





それは、私の手を離れ、ようやく元の持ち主のところへ帰ってくることが出来たのだ。






「――――ありがとうございました」





そして、受け取った二人の声は重なり、私の胸に静かに溶けた。





< 46 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop