Blue Moon
「―――じゃあ、お嬢さんはこの部屋を使うといい。
俺は外で寝ているから」
ちょうど、宿の空き部屋が一つ―――ベッドも一つしかなかったため、こんな状況になっている。
「それは絶対だめ!」
「……」
「だって…!」
「…お嬢さ…」
「こんな大きくてふかふかのベッド、初めてだもの!」
「…は?」
「…え?」
「……」
「……」
一瞬の沈黙のあと、目を輝かせる私にネオは失笑した。
私は思ったことを言っただけで、おかしなことは何一つ言ったつもりはない。
「時々、あんたは本当にお姫様だったのかと、疑いたくなる時がある」
「それ、どういう意味よ」
「褒め言葉だよ」
全然褒め言葉に聞こえない。
けれど、私がお姫様だったのはほんの数か月であって、そのほとんどは肩書きだけだ。
お姫様の考え方なんて、私は知るはずもない。