ユメモノガタリ。


"待ってよ"

と手を伸ばそうとして、足が碧い波に包まれていた。気付いた時には、もう手の届かない程の距離に彼がいて。音のなかった筈のここに、波の音が酷く耳を支配する。

寒さのせいか、何なのか、身体の震えが止まらなくなった。込み上げるものを我慢できなくなった。

何度も彼の名前を叫んでみても、波の音がすべてをかき消してしまう。


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