幼馴染みはストーカー
「今日真から連絡があってね。近々帰国出来るそうなのよ」
実は守には2歳年下の弟がいる。
名前は神宮寺真(まこと)。
現在アメリカに留学中らしい。
らしいというのは実際には会ったことないから。
私がこの家に居候する前から居なかった。
「あ、麗華ちゃん。悪いんだけど守呼んできてくれないかしら?」
「はーい」
2階に上がり、守の部屋をノックもせずにガチャリと開けると無数の私の顔が見えた。
壁にも床にも天井にまで所狭しと並べられた私の盗撮写真。
後ろ姿から横顔、寝ている写真などどれも焦点が合っていない。
机の上のパソコンには私の盗撮写真が保存されている。
その他にも数々の電子機器やよく分からない機械類などがたっくさん。
まるで私の為に誂えたかのような部屋に嫌悪感が増す。
壁一面に自分の写真が貼られているのを見る程気持ちが悪いものはない。
しかも床にも貼られているから自分の顔を踏んでいるのかと思うと…。
「ノックしてっていつも言ってるじゃん」
部屋の前で立ち尽くしている私に圧し掛かる重圧。
背後から首に腕を巻き付けて抱き着かれた。
「これ止めてっていつも言ってるじゃん」
姿勢はそのままで文句たらたら。
「これって?」
……分かってるくせに。
「この写真」
見渡す限り私の写真だらけの部屋を指差す。
「俺の唯一の癒しを奪うつもり?」
……はぁ。
「……夕飯が出来てるから早く来いって」
守は腕を振りほどいた私にむかって満面の笑みを浮かべながら頷いた。