幼馴染みはストーカー
皆で食卓を囲んでそよ子さん特製のハンバーグを食べながら話題に昇ったのは私の母との馴れ初め。
「元々ビリーがFBIのスパイとして潜入していたのが切っ掛けだったわ」
「ビリー?」
「ビクトリアのことよ」
皆が黙々と食べるなか、そよ子さんは一人懐かしそうに語る。
「ところがCIAの工作員ということがバレちゃって捕らえられてしまったの。その逃亡の手助けをしたのが私。まぁ、そのおかげで解雇処分くらっちゃったけどね」
懐かしいわぁ~と微笑むそよ子さんに皆苦笑い。
「でもそのことを揉み消してくれたのが当時支局長だった和武さんだったの」
何故か母との馴れ初めから和武さんとの馴れ初めに話が変更してしまっている。
「それでね、和武さんったら『責任は全て自分が取ります』って言って私が辞めるときに一緒に辞めようとしてくれてね、流石にそれは嫌だったから必死に説得したんだけど聞いて貰えなくて、その場で『結婚しよう』って!勿論OKしたわ。でもそうなるといろいろ障害が残るでしょう?だから今後の為にもFBIに残ってもらったのよ。和武さんはね、普通なら敵のスパイを逃がした重罪人の私は処刑されるのにそれを内々に纏めてくれて解雇だけで済ましてくれたのよ~!情熱的でしょう~?」
「「……」」
ニコニコしているのはそよ子さんと和武さんだけ。
いつまでも続きそうなのろけ話に私と守はげんなり顔。
「……それで母とはその後も?」
「そうなのよ!あの子ったら律儀な子でねぇ、わざわざ私に会いに来てくれたの。自分は危ない立場にいるのにも拘わらずよ。でも今はあの子を助けて本当に良かったと思ってるわ。だって麗華ちゃんと出逢えたんですもの。あの時見殺しにしていたら麗華ちゃんと逢うことはなかっただろうし、なにより自分が一番罪悪感に苛まれていたでしょうね」
「その点については俺も同意見だよ」
私にむかってウインクしたそよ子さんに深く頷く守を見て、改めて母とそよ子さんの友情の深さを実感した。