だから君に
■思い出の顔
「遅くなってごめん…。」
俺はそう言って下げた頭をあげることができなかった。
頭をあげてもう一度君の顔を見たら、俺は本当に諦められなくなる。
そんなの試す必要もなくわかった。
だって、君の声を聞いた時やっぱり今までと同じように胸が高なった。
あれだけ、自分の心を押し殺したのに。
心を無にしようと頑張ってたのに。
なのに、たった一言。
一言の声を聞いただけで、あんなにも胸が高鳴って、無にしたはずの心が全然無になってなかったって気づかされるなんて。
だから俺は下げた頭をあげられなかった。