諸々の法は影と像の如し
「と言っても、同じ人間じゃない」

 単に厄介事を押し付けられているような。
 宮様だって怖いだろうに、お上直々のお声掛かりで断れなかったということか。

「でもまぁ、あながちいい加減な人選でもない。女性のほうが神に近いのは本当だ。まぁ魔にも近いがな」

 くくく、と笑う。
 そんな守道の前に、ばん、と章親は手をついた。

「笑いごとじゃないよ。今回の事件は実際に何人も殺されてるんだ。ほんとに人食い鬼がうろついてるってのに、危ないよ」

「だから。これも宮様の義務なんだよ。俺たちが宮様をお守りするのも義務。危なくてもしょうがないだろ」

 守道は、あまり危機感を持っていないようだ。
 あっさりと言う。

「守道は、信じてないの?」

 章親も守道も、人食い鬼の話は知っているが、実際に現場を見たわけではない。
 死体を見たわけでもないので、それが本当に鬼の仕業かと言われると微妙なのだ。

「どうだろう? 何とも言えんな。ただなぁ、どうも九条家が絡んでそうな気はする」

 不意に守道が、思わぬ名を出した。
 九条家は名門中の名門だ。
 お上の外戚などを多く輩出している。

 が、目立った権勢はない。
 同じ一族でも御堂家の陰に隠れている感じだ。
 だがどちらも章親や守道にとっては雲の上の存在である。
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