諸々の法は影と像の如し
 守道は女性に向かって一礼してから、円座に腰を下ろした。

「何言ってるんだ。上出来だぜ。俺の見たところ、こちらの御魂は蛇神系じゃないか?」

 そういえば、この女性がどういう御魂か、まだわからない。
 ちらりと章親は女性に目をやった。
 金色に光る瞳の瞳孔が縦長だから、確かにそっち系のようだ。

 が、女性は手にした錫杖を、びっと守道の鼻先に突き出した。

「そのようなモノではない。我は八大竜王ぞ」

 い、と章親と守道が仰け反る。
 女性は錫杖を、どん、と床に立てると、驚く二人に向かって鼻を鳴らした。

「な、何で竜王なんかが、僕の御魂に……」

 章親が頭を抱えて再び項垂れる。
 御魂の眉間に皺が寄った。

「竜王『なんか』とは何じゃ! そもそもお前が悪いのだぞ! 我が泉の傍で遊んでおるときに、引き寄せるからじゃ!」

「そ、そんな事故的なもので、召喚されないでよ!」

「知らんわ! 我だって好きで召喚されたわけではない!」

 どうも、相当強い御魂を召喚することは出来たようだが、強いだけに従順さは皆無のようだ。
 章親は性格上、己の作った式であっても主従関係というよりは、友達関係のような、のほほんとした関係を好む。

 故に何でもかんでも言うことを聞いてくれないといけないわけではないが、この御魂はそれ以前の問題のようだ。
 性格がキツ過ぎる。
 仲良くなれそうもない。
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