諸々の法は影と像の如し
「何。何でいきなりそんなところが?」

 きょとんとする章親に、守道は肩を竦めた。

「ちらっと聞いたことがあるだろ。まだ俺たちが生れる前ぐらいの、お前のじいさまの話。晴明殿と同等の能力を持った術師がいたって」

「ああ……。そういやそんな話を聞いたことがある。でも官人じゃなかったんでしょ」

「だから怖いのさ。人によるだろうが、政治的背景のない奴は、頼まれれば何でもやるからな。力があるならなおさらだ」

 昔々に聞いたことのある祖父の話に、市井の術師とやり合ったというものがあった。
 ちゃちい辻占師などではなく、大陰陽師である祖父をも苦しめた相手だったらしい。

 祖父はその力故、宮中でもかなりの大物から目をかけられていた。
 当時は陰陽寮最盛期だったこともあり、政治にも影響を及ぼすこともあったという。
 その術師とも、元々は朝廷の権力争い絡みで出会ったとか。

「おじいさまの協力で政権を取った御堂家を、九条家が追い落とそうとしてるってこと?」

 何分政治絡みのこと故、祖父も詳しいことは言わなかった。
 だが祖父を何かと頼りにしていたのは御堂家だ。

 そういえば、九条家にかけられた呪を祖父が見破ったとかいう話も聞いた。
 御堂家は、間違いなく祖父を重宝していた。

「かもね。晴明殿がついていたのが御堂家。その政敵・九条家についていたのが、その術師だって話だしな」
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