諸々の法は影と像の如し
「皆、結構本気で人食い鬼の存在を信じてる。だからお前の言う通り、宮様が最も危ないと思うだろ? だんだん襲われる人の身分が上がってるし、だったら宮様なんて次の餌食には打ってつけじゃないか。しかも宮様は、人食い鬼の調伏祈願に行くわけだから、人食い鬼からしたら何としても阻止したい。そう考えると宮様が一番危険だって、皆思うわな」

「だから、警護をここまで万全にするんでしょ?」

「けどな、この連続殺人事件が物の怪の仕業に見せかけた凶賊のやったことだったら? だんだん身分が高くなって、宮中にも被害が出てる。そこは一緒だ。で、恐れをなしたお偉方が、神仏に縋る。高貴な宮様を遣わして、大々的に参拝を行う。当然警護は厳重だ」

 守道は、部屋の隅にあった碁石を引っ張り出すと、白い碁石を一つ、床に置いた。
 それを、たくさんの黒い碁石で囲む。

 白い碁石が宮様、黒い碁石が護衛、ということだろう。
 さらに、碁石の入っている箱を、少し離れたところに置く。

「ここが内裏だ」

 そこで、章親は、あ、と気付いた。
 内裏の警備が手薄になる。

「そう。俺はむしろ、宮様よりも内裏のほうが危ないんじゃないかと思ってる」

「な、なるほど。さすが守道」
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