諸々の法は影と像の如し
「あ、呼んだわけではないよ」

 先程守道が名を口にしたので、呼ばれたと思って出て来たらしい。
 そういえば、と章親は守道の御魂である紺を見た。

「紺て、必要なときしか現れないね?」

 よくよく考えてみると、陰陽寮でも他の御魂を見ることは滅多にない。
 召喚の儀を済ませた者も、いつも御魂を連れているわけではないのだ。

 考えてみれば、式だってそうだ。
 必要なときだけ呼び出す。

「普通はそうだろ。いつも御魂引き連れてる奴はいないぜ」

 守道も、当たり前のように言う。

「でも魔﨡は、ずっとそこにいるよ?」

 今も章親の部屋で羽を伸ばしている(多分)。
 姿が消えることはない。

「そういやそうだな。多分お前の御魂は、他の御魂と種が違うんだろ。そりゃそうだ、龍神だからな。格からして違う」

「元々が違うものなのかな。まぁどこにいるのかわかんないのも困るけど」

「お前は式も、結構いつでもいるものな」

 章親の身の回りの世話をしている楓など、もう普通の女房のようだ。
 章親が一旦作った式は、そう簡単に消さないからだが。

「可哀想なんだよね。使い捨てみたいで」

「ま、お前がそういう奴だから、作る式も質が良いのさ」
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