諸々の法は影と像の如し
 わざわざ出向いたものの、屋敷にも妙な空気はなかったし、姫君自体にも、特に穢れや呪が付いているわけではなかった。
 確かに何かに怯えている風ではあったものの、物の怪が憑いているとか、その辺にいるとかいう感じもなかったのだ。
 それでは対応出来ないので、とりあえず部屋を清めて、呪の札を渡したのだと言う。

「章親がいれば、何かわかったかもしれんなぁ」

 再び干菓子を口に放り込みながら言う守道に、章親は首を傾げた。
 守道だって能力は秀でている。
 きちんと視たのだろうし、そうであれば章親が視たって一緒だろう。

「大丈夫だよ。そこまでしたんだったら、僕が視たって同じことだよ。ほんとに何かいたら、僕なんて足手まといだし」

「そこは強い御魂がいるだろ。でも確かに、万が一のためにお前を連れて行かなかったってのもある。御魂と喧嘩中だから、章親が怪我するかもだしな」

 祓いもモノによっては危険を伴う。
 攻撃力皆無の章親が危ないのは明白なのだ。

「ところでそれが何? 何か気になるの?」

 章親が問うと、守道は、考えつつ慎重に口を開く。

「はっきりしたことはわからんが。……何となく気になる。姫君が病に伏してから、宮中での物の怪騒ぎが始まったような気がしないでもない」

 回りくどい言い方で、守道が言う。
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