諸々の法は影と像の如し
「僕一人ぐらい抜けてもバレないだろうし、そうしようかと」

 陰陽寮の持ち場は糺の森であり、宮様の護衛だが、章親はそこを守る大勢の内の一人だ。
 守道は選ばれて宮様の近くに付かねばならないので外れるわけにはいかないが、章親なら大丈夫だろう。

「僕が内裏にいれば、向こうで何かあったら魔﨡を呼べばすぐに来てくれるでしょ」

「そうか。それはいい」

 守道も賛成する。
 だが。

「嫌じゃっ。何で人の真似事をしてまで関係のない者に付かねばならんのじゃっ。しかも章親もいないというにっ」

 つーん! と魔﨡がそっぽを向く。

「いやいや、そのときだけでしょ。僕がお願いしてるんだよ」

 本来は命令なのだが、魔﨡に命令する勇気はない。
 魔﨡も単純なもので、章親にお願いされると弱いようだ。
 口をへの字にひん曲げながらも、章親に顔を戻した。
 何だかんだ言っても仲良しである。

「じゃがの。もし森のほうで変事があった場合、章親なしでは誰が我を御するのじゃ。他の者の言うことを聞く我ではないぞ? 何をどうすればいいのかわからんまま暴れてもいいのか?」

 う、と章親も守道も固まる。

「た、確かに。悪くしたら、章親が責めを負うことになるな」

「う、そ、それは御免被りたい……」

 魔﨡が暴走したら、それこそ大参事だ。
 想像しただけで恐ろしい。
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