諸々の法は影と像の如し
 足早に森の浄化を済ませた章親は、その足で守道の屋敷に行った。
 もう宮様の参拝は明日なのだ。
 ちんたらしている暇はない。

「ごめんね、忙しいときに」

「いいけど。よっぽどのことなのだろ?」

 部屋に入るなり、章親は要件を切り出した。
 懐から懐紙を取り出す。

「毛玉が見つけたんだけどね。これ、森に落ちてた小石なんだ」

 言いつつ、そろりと懐紙を開ける。
 穢れが付いているものを、不用意に摘むものではない。
 守道も身を乗り出して、章親の手元を覗き込んだ。

「森に穢れが?」

「うん。ていうかさ、何かこの数日、一点だけ穢れてる箇所があるのに気付いたんだ。でも範囲も小さいし、特に気にするほどのものではないとは思うんだけど」

「そんなことがあったのか」

「言ったほうが良かったかもしれないね。でも毎日、ちゃんと浄化したから。浄化すると、ちゃんと消えるんだ」

「まぁ……そういうことも想定して、章親が毎日巡回してたんだしな」

 守道が懐紙ごと小石を持ち上げて、まじまじと見る。

「穢れはもう浄化されてるな。ふ~む、言われてみれば、確かに血がついてるようにも見えるが……」

 やはり守道も、章親と同じ意見だ。
 言われないとわからない程度の血に、さらにすでに穢れも消えている。
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