諸々の法は影と像の如し
「紺!」

 守道が叫ぶと、ひゅっと一陣の風が吹き、小さい子供が現れた。
 紺はそのまま、物の怪に体当たりするように突っ込んでいく。

 だが物の怪は大きく跳ねて、それを避けた。
 一旦動きを止め、闇溜まりにじりじり近付きながら、物の怪は、じぃ、と毛玉を見る。

『……次の……獲物……』

 耳障りな声で呟き、にぃ、と笑う。

「待て!」

 守道が呪を放ち、紺が物の怪に飛び掛かる。
 が、一瞬早く、物の怪は、ぴょん、と飛んで闇溜まりに姿を消した。

「……」

 物の怪が消えたと同時に、闇もなくなる。
 普通に燭台の灯が照らす室内で、守道と章親は息をするのも忘れて、部屋の一点を見つめていた。

「……あ……毛玉、大丈夫?」

 しばらく経ってから、ようやく章親は傍の毛玉に目を落とした。
 そして、ぎょっとする。

「け、毛玉っ!」

 ひっくり返っている毛玉を、慌てて覗き込む。
 が、別段どこも怪我はなさそうだ。

 飛び掛かられたのも初めだけ。
 気を失っただけだろう。

「良かった……。でも、何であんなものが?」

 毛玉の結界を解きながら言った章親が、いきなり、うわ、と膝に乗せた毛玉を落とす。
 ごん、と頭を打ち、毛玉は、あいた、と言って覚醒した。
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