諸々の法は影と像の如し
「な、何、その穢れっ!」

 章親に言われ、毛玉はきょとんとする。
 結界を解いた途端、凄い穢れが感じられたのだ。

 だがさっきまでは、そんなことはなかった。
 いきなりだ。

 穢れというより、妖気のようだ。
 いきなり妖気が強くなっている。

「さっきの物の怪に呼応したのか? 毛玉の仲間か?」

 守道がいまだ油断なく部屋の中を見回しながら言う。
 が、毛玉はぶんぶんと首を振った。

「ち、違います。あんな恐ろしい物の怪。だってあいつ、わしを食おうとしましたよ」

 半泣きで言う。
 あ、今回はそうだったんだ、と、章親はちらりと毛玉を見た。

 確か毛玉も、最初章親に飛びついて来た。
 毛玉は嬉しくて笑ったのだろうが、開いた口から同じような牙が覗いて、章親は食われると思ったものだが。

「毛玉。さっきのも、毛玉に会えて嬉しかったとかじゃないの?」

 言ってみるが、毛玉はさらに激しく首が取れそうなほどぶんぶんと左右に振って否定する。

「違いますって! 殺気丸出しでしたもん! それに奴からは、思いっきり強い穢れを感じましたし! 同じような鬼かもしれませんが、奴は悪鬼ですよっ!」

 きゃんきゃんと言う。
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