諸々の法は影と像の如し
「でも実際には、近くに付けて、尚且つ周りをよく浄化しないとわからないほどの僅かな穢れだった。付けた穢れを隠す呪を施してたわけでもない。てことは、血に呪がかかっていたわけではないんじゃないかな」

「森の穢れと、さっきの物の怪は無関係だってのか?」

「関係ないとは思えないよね。あの僅かな穢れを元に、物の怪が入り込んできたんだから」

 う~ん、と二人とも頭を悩ます。

「糺の森に穢れを付けた人間が、何らかの方法で鬼を呼び出せるってことか? ていうか、そんな穢れを宮様が来られるところに故意に付ける意味は何だ。ヤバいじゃないか」

「狙いは、やっぱり宮様ってこと?」

「そう考えれば納得がいく。理由まではわからんが。となると、別段内裏に危険はないってことかな」

「内裏には、さすがに入り込めないんじゃない? あの物の怪が穢れを媒体にするんだったら、まず内裏に穢れを持ち込まないといけない。ただの血じゃないんだろうし、そうなると陰陽寮のある内裏なんかに、外からのヤバい穢れは持ち込めないよ」

 陰陽寮には常に陰陽師が詰めている。
 何かあっても対応できるはずだ。

「そっか。まずは穢れを持ち込まないようにすれば、あの物の怪に襲われることもないってことだね」

 ぽん、と手を打ち、章親は顔を上げた。

「それぐらいなら、僕でも対応できるよ。宮様が危ないかもしれないけど、僕がいても役には立たないし、だったら僕は内裏のほうを見張るほうがいい。父上に、そう言っておくよ」

「ああ。でも気を付けろよ」

 頷き、章親は急いで屋敷に帰った。
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