諸々の法は影と像の如し
屋敷の庭先で、章親の足が止まった。
そこには何人かの雑色(ぞうしき)に押さえつけられた男が、禍々しい気を放っている。
その前では吉平が、男に向かって懸命に呪を唱えていた。
「おお章親。手伝ってくれ」
額に汗を浮かせた吉平が、章親の姿を捉えて焦ったように言った。
吉平でもなかなか調伏出来ないらしい。
が、章親はその場に突っ立ったままだ。
足ががくがくと震えている。
陰陽師でありながら、章親はこういった手合いが苦手なのだ。
悪霊など恐ろしくて失神してしまう。
「章親!」
吉平に叱咤され、章親は慌てて印を結んだ。
とりあえず、場を浄化しようとしたのだ。
が、その気配を察した男が、ぎ、と章親を睨んだ。
姿は人間だが、明らかにおかしい。
どこぞのお屋敷の下働きの者らしく、痩せた身体に粗末な水干をつけている。
水干の下はどうだかわからないが、章親のほうを向いた顔は灰色で、白目を剥いた両眼が黄色く濁っている。
まるで死人だ。
ひぃ、と章親の喉が鳴った。
「章親! 怯むな!」
吉平が叫んだ途端、物の怪憑きの男は、章親に向けて跳躍した。
人ではあり得ない脚力で、一足飛びに章親に迫る。
そこには何人かの雑色(ぞうしき)に押さえつけられた男が、禍々しい気を放っている。
その前では吉平が、男に向かって懸命に呪を唱えていた。
「おお章親。手伝ってくれ」
額に汗を浮かせた吉平が、章親の姿を捉えて焦ったように言った。
吉平でもなかなか調伏出来ないらしい。
が、章親はその場に突っ立ったままだ。
足ががくがくと震えている。
陰陽師でありながら、章親はこういった手合いが苦手なのだ。
悪霊など恐ろしくて失神してしまう。
「章親!」
吉平に叱咤され、章親は慌てて印を結んだ。
とりあえず、場を浄化しようとしたのだ。
が、その気配を察した男が、ぎ、と章親を睨んだ。
姿は人間だが、明らかにおかしい。
どこぞのお屋敷の下働きの者らしく、痩せた身体に粗末な水干をつけている。
水干の下はどうだかわからないが、章親のほうを向いた顔は灰色で、白目を剥いた両眼が黄色く濁っている。
まるで死人だ。
ひぃ、と章親の喉が鳴った。
「章親! 怯むな!」
吉平が叫んだ途端、物の怪憑きの男は、章親に向けて跳躍した。
人ではあり得ない脚力で、一足飛びに章親に迫る。