諸々の法は影と像の如し
第十二章
　賀茂社では荘厳な雰囲気の中、宮様の参拝が行われていた。
　元々大々的にするつもりはなかったのであろうに、お成りが決まってから実際行われるまでに人食い鬼の被害が拡大したため、かなり大袈裟なものになった。

「う。警備が厳しいなぁ。今から森には入れないかな」

　変に警備の者に見つかると、勝手に持ち場を離れていたと思われ、陰陽寮が叱責される。
　その通りといえばそうなのだが、そうなると父の顔も潰すことになろう。

「困ったな……。でも今のところ、森に変事は起こってないみたい」

　少し離れたところから、糺の森を眺める。
　大勢の人がいるとは思えないほど静かだ。

　このまま何事も起こらないことを祈りたい。
　賀茂川に架かる橋の上で、章親は森を見守った。

---魔﨡はちゃんとやってるかな---

　それも気がかりだ。
　宮様に無礼を働いていないだろうか。

　言ってしまえば宮様よりも、魔﨡のほうが遥かに敬うべき存在だ。
　何せ神様なのだから。

　だがそんなこと、宮司しか事情を知らないのでわかりようもない。
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