諸々の法は影と像の如し
第十三章
 さて糺の森まで戻った章親は、とりあえず人の少なそうなところの検非違使に断りを入れて、無事中に入ることが出来た。
 とはいえ、大っぴらに移動して宮様の近くに行くわけにもいかない。

 皆所定の位置で畏まっているのだ。
 参道に出ては目立つので、章親は森の中を伝って、出来るだけ宮様が見えるところまで移動した。

---え……?---

 ふと、章親は異変を感じた。
 僅かに穢れを感じる。

---この感じは……あの穢れだ---

 毎日のように森に付いていた、一点だけの穢れ。

---何で? 浄化したはずなのに---

 そう思ったとき、はっと章親の頭にあの若者が浮かんだ。
 この感じ。
 あの若者に感じた違和感と同じではないか。

---え、じゃあ穢れの元は、あの子?---

 いやでも、あのような気は人のものではない。
 若者は何か普通でない印象ではあったが、人でない、というほどのものではなかった。

 困惑しながらも森から穢れの元を探ろうとした章親は、少し向こうの茂みの奥が、やけに暗いのに気付いた。
 ぞくり、と章親の背筋が冷える。

 この感じ。
 やはりあの若者と目が合ったときに感じた。

 それに、確か毛玉が襲われたときも……と気付き、章親は、がばっと宮様たちのほうを振り向いた。
 同時に闇溜まりから、凄まじい妖気が飛び出した。
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