諸々の法は影と像の如し
 良く通る声で、滔々と語る。
 伊勢の斎宮の資格も持つ宮様だ。

 鬼を見ても、一つも恐れないこの態度も、どこか神々しい。
 皆、宮様の言葉に呑まれている。

「……確かに、宮様の仰ることにも一理あります」

 少し考え、守道がため息と共に言ったことに、周りの皆が目を剥く。

「ま、まさか本当に、我らを帰すおつもりか?」

 検非違使別当が青くなって言う。

「は。別当殿の懸念もお察ししますが、確かに我らだけで皆さまをお守りするのは至難の業。ですが宮様お一人なれば、他に気を取られることなく集中出来ます。それに、鬼の調伏に反応して姿を現した、というのも、あながち間違いではないやもしれませぬ」

「し、しかし。実際に鬼が出たのであればなおさら、我らでもっと周りを固めるべきでは」

 別当としても、宮様のお成りとして仰々しく行われた参拝を、途中で逃げ出して帰るような真似は出来ない。
 ちら、と守道は宮様を見た。
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