諸々の法は影と像の如し
「み、御魂様、倅を守ってくださったことは感謝します。とりあえず、ちょっと落ち着いてくだされ」

 当然ながら、この美女は先程召喚された章親の御魂だ。

 召喚者と御魂は、単なる式よりも繋がりが深い。
 召喚者にとっては生涯の相棒になるわけだから、お互いの信頼の度合いも強いものだ。
 単なる人間である召喚者の身を守ることも、御魂の役目とも言えるのだが。

「ったく、情けないのぅ」

 舌打ちと共に、御魂は足元で腰を抜かしている章親を見下ろした。
 そして錫杖を肩に担ぐ。

「それ、そのままで良いのか? 滅してしまえばいいではないか」

 腰に手を当てて、顎で地に転がる男を指す。

「あ、はい。もちろん滅しますが」

 吉平が言った瞬間、御魂は担いでいた錫杖を振り被った。
 また慌てて吉平が止める。

「いやっ! そうではなくて、中の憑き物だけを滅するのです!」

 どうもこの御魂の言う『滅する』は、入れ物、つまり憑かれた人ごとやっつける、という意味だったようだ。
 吉平に止められ、御魂は不満そうに、しぶしぶ錫杖を降ろす。

 錫杖を振り被ったときは喜々とした表情だったのに、降ろすときは不満そうだ。
 なかなか物騒な御魂である。
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