諸々の法は影と像の如し
 再び沈黙が落ちる。
 興味津々で陰陽師三人の話を聞いていた宮様が、何か思いついたように、不意にぽん、と手を叩いた。

「ねぇ。何で鬼を召喚したら、召喚師が死んでしまうの?」

 お付きの者がいなくなったためか、随分言葉が砕けている。
 そういえば、章親たちの間に几帳も立てていない。
 いいのだろうか。

「人食い鬼など召喚したら、鬼とまず対峙するのは召喚師でしょう。美味そうなご馳走が目の前にあるわけです。鬼にとって人など脅威ではありませぬ故、躊躇いなくご馳走に食らいつくわけですよ」

 章親は何となく遠慮かあって、宮様を直視など出来ないが、守道は何ら気にせず疑問に答える。
 宮様も、特に守道を咎めることもない。
 ふむふむ、と頷いた。

「でも、そなたらが行う儀式の中に、御魂の召喚ってものがあるそうじゃない。あれだって似たようなものでしょう? いつもお優しい御魂が降りるとは限らないって聞いたわよ」

「小娘。失礼なことを言うな。我らと鬼を一緒にするなど」

 間髪入れずに魔﨡が突っ込む。
 青くなって慌てた章親だが、小娘呼ばわりされた宮様のほうは、何ら気分を害した風もない。
 あ、そうね、と軽く言って、ぺこりと頭を下げる。
 随分気安い宮様だ。
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