諸々の法は影と像の如し
「我ら御魂は、主には逆らわん。主たる召喚者は、これ、という指定をして呪を唱えるわけではないしの」

 魔﨡の凛とした声が響く。
 魔﨡は偉そうにすればするほど輝くな、と内心思い、章親は上座でふんぞり返って説明する己の御魂を見た。
 ちなみにここに腰を落ち着けたときから、当たり前のように魔﨡は上座を陣取った。
 ……宮様がおられるというのに。

「召喚師である陰陽師が唱える呪に反応した御魂が、自ら降りる、ということじゃ。言うなれば、我らが召喚師を選んでおるのよ」

「なるほど~。では無理やり召喚された鬼が怒り狂うのも、無理からぬことというわけね。あら、召喚師がいないってことは、あの鬼を御せる者はいないってこと? 元に帰してやることも出来ないの?」

 最早すっかり友達のノリで魔﨡と話す宮様が、意外なことを言った。

「無理やり召喚されたのなら、ちょっと可哀想じゃない。帰してやれば、おいたもしないでしょう?」

 おいたって……と陰陽師三人は思ったが、なるほど、そういう考えもある。

「いきなり召喚されて、鬼も不安に思ってるところもあるかもね」

 章親も同調する。
 だが守道は、ばん、と床を叩いた。

「物の怪に、そんな感情あるかよ。ちょっと甘過ぎる考えじゃないか?」

「いやでも。現に毛玉は良い子だよ? 僕が思い出したら、すっごく嬉しそうだったし」

「章親の周りの物の怪は、おのずと良い奴ばっかりなんだよ。お前は自然と守られてるんだから」

 守道も章親の纏う空気の効能に気付いていたらしい。
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