諸々の法は影と像の如し
「此度の警護は、あの鬼から宮を守るためであろ。宮も鬼の調伏祈願に来たのであるなら、ここで鬼を滅してしまえば祈願成就で護衛も成功。一気に解決じゃ」

 多分魔﨡は、このお役目に飽きて来ているのだ。
 とっとと解決して屋敷に帰りたいのだろう。

「でもいきなり滅してしまって大丈夫かな」

 章親の言葉に、魔﨡は不満そうな顔を向ける。
 だが気付かぬふりで、章親は懸念を口にした。

「誰かが召喚したのは確実でしょ? で、その人が食われてるとしても、それを野に放った理由があるわけだよ。それがわからないままでいいかな。召喚者が一人とは限らないし。何人かが集まって計画したことなら、また一人を犠牲に、新たな鬼を呼び出すことだって考えられるよ? 元を絶たないと解決とは言えないんじゃない?」

「さすがは安倍のご子息!」

 宮様が、びしっと扇を章親に向ける。
 もう顔を隠すつもりもないらしい。

「そうよな。今後もあんな恐ろしい鬼がぼこぼこ生まれるは恐怖ぞ。そなたらは対応出来ようが、私たち凡人はひとたまりもないからね」

 興奮すると言葉遣いが荒くなる。
 ああ、魔﨡が二人いるみたい、と章親は胡乱な目で宮様を見た。
 やはり基本は偉そうである。
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