諸々の法は影と像の如し
「もっともな意見だが、でもどう手繰る?」

 守道が、章親を見る。

「どちらにしろ、鬼をとっ捕まえることには変わりないような気がするが」

「う、それは難しいねぇ。魔﨡、生け捕りとか出来る?」

 そろそろと魔﨡を見れば、思いっきり不満顔とぶつかる。
 滅することは得意でも、生け捕ることは苦手のようだ。

「あのような乱暴者、生け捕るのは至難の業ぞ」

 自身も乱暴者なだけに説得力がある、と密かに思い、章親は息をついた。

「大体さ、あの鬼、ちゃんと人語を解するかもわかんないじゃない。手繰る糸はさ、他にもあるような気がするんだ」

 毛玉を襲ったとき、鬼は『次の獲物』と言った。
 人語を喋った、と言えるのだが、会話が成り立つかはまた別問題なのである。

「手繰る糸? 何か気付いたのか?」

「気付いたというか……。何となくだけど、ちょっと気になることがあるんだ。全然関係ないかもしれないんだけど」

 章親が言ったとき、不意に、かつ、と小さな音がした。
 顔を上げた守道が、素早く印を結んだ状態で、妻戸に近付く。
 よくよく様子を窺ってから、そろ、と細く戸を開けた。
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