諸々の法は影と像の如し
「石?」

 手を伸ばして石を摘み上げようとした守道の手が止まる。
 伸ばした指の先に、何か感じたのだ。

「章親」

 手を引っ込め、守道は章親を呼んだ。

「どうしたの?」

「この石、何か妙な気を感じる」

 守道の肩越しに小石を覗き込み、章親は、あ、と声を上げた。

「これ、触らないほうがいい」

 そう言って、呪を唱えながら、懐から出した懐紙で小石を掬うように取る。
 そうした上で、章親は、きょろ、と外を見回した。
 さわさわと風が流れるだけで、特に何も感じない。

---でも何か……何か気になるような感じはするんだけど---

「章親?」

 訝しげな守道に声をかけられ、章親はもう一度周りを見回してから、部屋に戻って戸を閉めた。
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