諸々の法は影と像の如し
「それが毛玉かっ」

 章親が座に戻るなり、宮様は身を乗り出す。
 章親の肩に乗っていた毛玉は、ビビッて転がり落ちそうになった。

「えっと。この子も一応小鬼の類なんですけど。幼馴染というか」

「小鬼が幼馴染か! 凄い!」

 物の怪を見るのが初めてなのか、宮様はきらきらとした目で食い入るように毛玉を見る。

---まぁ見たことがないからこそ、物の怪は人に害為す恐ろしいものだと思ってたんだろうけどね---

 密かに思っていると、宮様は、不意に手を伸ばした。
 その手を、ぼす、と毛玉の上に落とす。

「にゃっ?」

 叩いたわけでもないが、撫でたわけでもない。
 玉を掴むように置いた手を、宮様はすぐに引っ込めた。

「ふわふわだ。凄いな」

 何が凄いんだか。
 どこまでの行動が許されるのだろう。
 そこの線引きが難しく、章親ははらはらしながら宮様を見守った。

「毛玉は何が出来るの? 消えたり飛んだり出来るの?」

 わくわく、と問いかける宮様に、毛玉は困ったように、ちらりと章親を見上げた。
 身なりだけでも、この宮様が高貴な人であることは一目瞭然だ。
 物の怪とはいえ、どういう態度で接していいのかわからないらしい。
< 178 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop