諸々の法は影と像の如し
「とりあえず宮様のお相手は毛玉に任せて。俺たちはこれを解明しようじゃないか」

 横からこそっと、守道が耳打ちする。
 そう言えば、今は毛玉を宮様に紹介するための時間ではない。
 頷き、章親は毛玉を宮様のほうへ押しやった。

「えっちょっと章親様ぁ。何わしを生贄にしてるんですか」

 宮様の膝先に押しやられ、毛玉が慌てる。
 が、章親は宮様に笑顔を向けた。

「この子は良い子ですし、さしたる力もありません。なので、宮様のお傍にあっても害はないでしょう。ご興味もおありのようですし、しばし毛玉でお遊びください」

「いいのかっ?」

 しえぇぇぇっと引く毛玉などお構いなしに、宮様は嬉しそうな顔になる。

「じゃあ毛玉。しばらく宮様のお相手をお願いね」

 そう言って、章親は毛玉に背を向けた。
 宮様を除いた三人で、再び車座になる。

「で、どう見る? つか章親、何か感じるところがあったのか? やけに外を気にしていたな」

「ああ……。僕というより魔﨡なんだけど。僕は毛玉が怯えてるから、何かあったのかなと思っただけで、特に何も感じなかった……ように思う。魔﨡が今、外を見回ってくれてるよ」

 とりあえずは大丈夫だろう。
 何かが森に潜んでいても、魔﨡なら気付くはず。
 章親は床に置いた懐紙を持ち上げて、そこに乗った小石を調べた。

「あの襲われた検非違使、あの辺りにもこれと同じ穢れがあったんじゃない? これ、わざわざ投げ込まれたよね。てことは、誰かが意図的に穢れを付けようとしたってことかな」

「そうだな。しかも、狙いは俺たちの誰か、となる」

 守道が、少し顔を険しくして言った。
 ん、と守道を見、章親は、あ、と声を上げた。

 わざわざこの部屋に穢れの付いた小石を投げ込んだのだ。
 守道の言う通り、この中の誰かを狙ってのことに間違いない。
 そう気付き、さらに章親は恐ろしいことに気付いた。
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