諸々の法は影と像の如し
「もしかして! 狙いは僕じゃないの?」

 青くなって叫ぶ。

「今日までずっと、ここの森に穢れが付いてたじゃない。ここの森を浄化してたのは僕だし、そう考えたら、僕の行くところにばっかりこの小石があるってことじゃない?」

「そうとも言うが、でもそうとも限らんぜ」

 まじまじと章親を見ながら、守道が言う。

「章親がここ最近行動したのは、今回の賀茂社参拝に関してだ。ここの森の浄化だってそのため。そして今だって、その行事のために、ここにいる」

 言いながら、ちらりと毛玉と遊ぶ宮様を見る。

「狙いは、宮様だな」

「やはり、そうか」

 吉平も渋い顔で頷いた。
 そうではないか、とは思っていたので、今回の警備も厳重だったのだ。

「じゃあ、何で検非違使が襲われたの? いきなり宮様を襲ったほうが、成功する率は高いよね?」

「わからんな……。人間違いとも思えんし。鬼自身には意思がないのかな。何かを目印に獲物を狙ってるんだったら、宮様に目印が付く前に、あの検非違使に付いてしまったってこと……か?」

 そしてその目印というのが、この小石ということか。
 小石というより、この穢れだ。

「ということは、この血の主が、人食い鬼の……主?」

「それが不思議だ。その血を求めて鬼が来るのに、何で主が生きていられる?」

 こんな小さな小石に、僅かに付いた血に反応するなら、その血を持った者などわからぬはずはない。

「主が鬼の召喚者で、我が身を犠牲に人食い鬼を召喚し、その血を誰かがばら撒いてるってことかな」

 守道の推理に、場の空気が重くなる。
 ぞくり、と、章親の背を冷たいものが流れた。
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