諸々の法は影と像の如し
「ふむ。ということは、その若者が、この石を投げ込んだ、ということか」

 一通り話を聞いた後で、吉平が懐紙の上の小石を指して言う。

「何者だ? そいつ、人なのかな?」

 守道も顎に手を当てて考え込む。
 魔﨡は、少し困った顔をした。

「我に絵心があれば、描いて示せるのだがな。歳の頃は……うう~~む……」

 そもそも人でない魔﨡には、人の年齢などわからない。
 きょろきょろと周りを見、章親に目を止めた。

「章親と同じぐらい……かのぅ。もうちょっと下か?」

「え、そんな若いの」

 章親も、守道も驚いた。
 何となく内裏に仇を生す市井の術者、という情報だけでは、結構な年寄りを想像していた。

 章親ぐらいの若者が、内裏の人間やそれなりの地位の貴族を害そうなどと思うだろうか。
 十数年の人生で、そんな政治に強い不満を持つとも思えない。

「若者、と言ったであろ。うむ、章親ぐらいじゃな。でもこう、何か周りの者と感じが違うというか。何かが引っかかったのじゃ」

 上手く言えず、魔﨡はもどかしそうに言う。

「他の者と異質な感じがしたから、声をかけたのじゃ」

「ええっ。魔﨡、積極的だねぇ」

 女子から男に声をかけるなど、少なくとも貴族ではあり得ない。
 そう考えれば今ここにいる女子たちは異質なのだが。
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