諸々の法は影と像の如し
「何が。変に思ったら聞くのが早いじゃろ」

「ていうか、何聞いたのさ。変って思っても、普通はそんなこと聞かないよ?」

 『お前、変だぞ』とか言いそう、と思い、章親は恐る恐る聞いてみた。

「何をしている、と聞いただけじゃ。近くで見ても、どーも引っかかる。人でないようだった」

「人でない?」

「まぁ、人か? と聞いても答えんかったがな」

「……答えないでしょ、普通」

 いきなり『人か?』などと言われたら、人はきょとんとするだろう。

「違う。そういう反応ではなかった。何というか、う~ん、バレた……という感じ……ではないな。う~ん、そう来る? みたいな」

 むきーっと頭を掻き毟りながら、魔﨡が状況を説明する。

「何か雰囲気がおかしかったんじゃ。存在が他と違うというか。違和感があった」

 もどかしげに言う。
 魔﨡の言う若者像を想像していた章親に、ふとある人物が浮かんだ。

 内裏の前で会った若者。
 確か、森の外の橋でも会った。
 あの若者も、何か違和感を感じなかったか。

「その子って、細くて……何か、どっかの家人……みたいな感じの格好の子?」

 生憎章親も絵心はない。
 言葉で表現するしかないのだが。
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