諸々の法は影と像の如し
「何か表情のない、お面みたいな子」

「ああ! そうじゃそうじゃ。面なしで能を舞えそうな」

 良い表現なんだか悪い表現なんだか。
 だが魔﨡は、ぽんと手を打った。

「章親。知り合いか?」

 何のことやらさっぱりな守道が、訝しげに章親を見る。

「いや、知り合いというわけでは。でも、今日会ったんだ。内裏の前と、あと森の外で。内裏の前で会ったときは、すれ違っただけなんだけど、橋の上でまた会ったから、ちょっと気になって。そのときに話しかけたけども、うん、確かにちょっと違和感あった」

 うんうん、と魔﨡がしきりに頷く。
 章親と同じように感じたことが嬉しいらしい。

「何を話したんだ?」

「いや、話したというか。う~ん、何話したかなぁ。またお会いしましたね、みたいな」

 首を傾げて記憶を探る。
 魔﨡が、ずいっと章親に身を寄せた。

「そのときは、そ奴、喋ったのか?」

「えっとぉ、うん。安倍の陰陽師かって言われた」

「あ奴、喋れたのか!」

 何故我の質問には答えぬ! と憤慨する。
 それは質問が悪かったからだ、と、ちらっと思ったが、とりあえず章親は口を噤んでおいた。
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