諸々の法は影と像の如し
「……まぁ章親の質問には答えたのじゃな」

 己に対する態度に腹を立てていた風なのに、意外に魔﨡はあっさりと引き下がった。
 どうやら主である章親に無礼を働かなければ怒りは収まるようだ。
 やはり仲良しである。

 だが、章親は首を傾げた。

「いや、別にこちらの言うことに答えたわけでは。ていうか、会話をしたわけではないっていうか」

 章親も何かを聞いたわけではない。
 単に声をかけただけだ。
 若者も、何か言ったが章親と会話した、という雰囲気ではなかった。

「当たり障りのない会話というか。お互い独り言のような……」

 橋の上での会話を思い出しながら、章親は考えた。
 最後に何か気になることを言われたような。

「あ! でもちょっと怪しげなことは言ってた! 森の外にいてもいいのか、みたいな」

「そりゃ、森の警護を頼まれてるはずの陰陽師が外にいたら、不思議に思うんじゃないか?」

 守道が言うが、章親はふるふると首を振る。
 言葉だけならその通りなのだが、纏っていた空気が違うのだ。

「そんなんじゃないよ。何て言うのかな、とにかくあの子は変だ。魔﨡にこの小石を渡したってことも、あの子が鬼を呼んでるってことになるじゃない」
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