諸々の法は影と像の如し
 そう考えれば、あの若者の不気味な気も何となく納得できる。
 だが、あのような凶悪な鬼を御せるほどの力があるようには思えない。

 人食い鬼を御せるほどの力となると、相当なものだ。
 そんな力の持ち主であれば、その者を見れば強力な術者であることはわかるはず。
 普通の者と、持つ気が違うのだ。

「確かに持つ気は違ったけど……。でも何というか、そんな強力でもないし、微妙に不気味っていうか。人と違う、ていうそのまんまの感じなんだよなぁ」

「人ではない、てことか?」

 悩みつつ言う章親に、守道が疑わしそうに言う。
 章親の気を視る力は優れているのだ。
 その章親を持ってしても、こうもはっきりわからないとは。

「人ではないってことは……ないと思うなぁ」

「そうじゃな。我も間近で見たが、ありゃ人じゃ」

「……でも魔﨡。その子に『人か?』て聞いたんでしょ?」

「聞いたが、人でない、とは、やはり思わん。少なくとも、外皮はな」

「魔﨡。怖いこと言わないで」

 何となくうそ寒さを感じ、章親は魔﨡を制した。
 だが魔﨡は、ちちち、と指を振る。

「章親も気付いたであろう? あの者、器こそ人じゃが、内面はどうだか。人の皮を被った化け物やもしれぬぞ」
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