諸々の法は影と像の如し
 ぞく、と章親は悪寒を感じた。
 信じたくはないが、魔﨡の言うことも、あながち外れではないように思う。

 あの若者の感じ。
 あれは普通の人とはちょっと違う。
 微かだったし一度であれば気のせいであったり若者の気ではないとも言えるのだが、二度もそう感じるということは偶然ではない。

 しかも二度目は間近で確認しているのだ。
 魔﨡も間近で若者の気の異常さに気付いている。

「まさか、あの子が鬼……?」

 青くなって言うと、魔﨡はふるふると首を振った。

「それは違うと思う。あれが鬼そのものだったら、もっと妖気が強いはずじゃ。まして何度も人を食ろうておる。身に付いた穢れは半端ないぞ。浄化能力があるわけでもないじゃろうし。そのようなもの、すぐに気付くわ」

 それに、と魔﨡は、錫杖をしゃら、と振った。

「我は鬼を見た。あのような普通のナリではなかったぞ。どちらかと言うと、その毛玉のほうが似ておる」

「ああ……。確かに」

 皆の視線が毛玉に集まり、何となく宮様と遊んでいた毛玉が、きょとんとする。

「え、この子と同じ鬼なの?」

 言うなり宮様が、毛玉の頭を掴んだ。
 そして片手で毛玉を押さえつけつつ、もう片手で頭をぐりぐりと探る。

「鬼だと言うわりには、やっぱり角がないわ」
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