諸々の法は影と像の如し
 この森には、常に穢れがあった。
 あの一点の穢れは、あの部分に鬼がいた、ということだろうか?

「うわ、怖。僕、毎日森の穢れを見つけては、そこを浄化してた。自ら鬼に近付いて行ってたかもってこと?」

 すぐに浄化していたから、鬼が出てくる暇がなかったのかも、と考えると怖気が走る。
 もしそうなら、浄化をもたもたしていた場合、鬼が飛び出してきたりしてた、ということか?

「いや、そうではあるまいよ」

 章親が一人で青くなっていると、不意に魔﨡が、ぽん、と肩を叩いた。

「おそらくその穢れは、鬼の通り道じゃ。あの鬼は穢れを目がけてくるときに、空間に闇溜まりを作って、そこから移動するようじゃ。今までの森の穢れは、鬼をここに呼び寄せる目印ではないかな。穢れさえあれば、あ奴は来るわけじゃし。誰かを襲えなくても、宮の前に鬼を現すことが目的だとすると、道を開いておけばいい」

「なるほど」

「さらに上手く誰ぞに穢れを付けられれば、呼び寄せた鬼がそ奴を襲う。ま、単に道に穢れを付けておけば、それを知らずに踏む人もおるだろうしの」

「てことは、誰でもいいから、とりあえず鬼の餌食にしようってことか。宮様だけが狙いではなかったということか? とにかく世を乱そうという魂胆なら、とんでもない奴だ」

 どん、と床を叩いて、守道が声を荒げる。
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