諸々の法は影と像の如し
 章親と魔﨡は、一旦顔を合わせ、う~ん、と首を傾げる。
 ここで鬼を実際に近くで見たのは、この二人だけなのだ。

 守道と吉平も先程見たが、宮様の傍を離れるわけにはいかなかったので、遠目だった。
 はっきりとは見えなかっただろう。

「いや、今回はやっぱり、宮様が狙いだったと思う。でも思いのほか警備が厳しくて、的を変更したんじゃないかな。あの検非違使は、運悪く穢れの小石を打ち込まれたんだと思う」

「打ち込まれた?」

 守道が、章親の物言いに怪訝な顔をする。
 章親は、床に置いた懐紙の上の小石を指した。

「これも、この部屋に向けて、明らかに放たれたものでしょ。誰かが宮様を狙って、この部屋に穢れを付けようとしたんだよ」

「あの小僧だな」

 魔﨡が、錫杖を構えて片膝を立てる。
 その喜々とした表情に引きつつも、章親は魔﨡を押し止めた。

「あのね。あの子は確かに怪しいけど、まだよくわかんないんだから。いきなりぶちのめしたりしないでよ」

「何を言うか。穢れを付けたのは間違いなくあ奴ぞ。我に穢れを付けたのは、あ奴だぞ」

 あ、そっか、と章親の魔﨡を押さえる手が緩む。
 魔﨡は直接あの少年からこの小石を受け取ったのだ。
< 194 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop