諸々の法は影と像の如し
「奴を締め上げればいいこと!」

 がばっと魔﨡が錫杖片手に飛び出して行こうとする。
 はた、と章親は、また慌てて魔﨡の腰に追いすがった。

「ま、待ってよ。確かにそうだけど、だったら何でわざわざ魔﨡に小石を渡したのかが気になるじゃない。何かわけがあったのかもよ? あの子がたまたま怪しい小石を拾って困ってただけかもしれないし」

「だったら今頃、あ奴が鬼に食われておるわ」

 う、と章親が口ごもる。
 先に小石を持っていたのなら、若者にも穢れがついているはず。
 だとしたら間違いなく鬼に襲われているだろう。

「あれ? じゃああの子は穢れが付いても襲われないってこと?」

 若者が召喚者だからだろうか。
 でもやはり、あの若者自体が人食い鬼を呼びだしたとは思えない。

 それに同じ穢れを感じるのに、彼だけ鬼に食われないのも謎だ。
 穢れが付いたものは見境なく襲う勢いの鬼なのに、あの穢れの塊のような若者が無事なのは、どう考えてもおかしい。
 召喚者ならなおさら、真っ先に食われるべき存在なのだ。

「だからそれも、奴を捕まえればわかることぞ」

「ちょーーっと待って! 大体魔﨡、あの子がどこにいるのかもわかんないでしょ」

「……あ、そうか」

 章親を腰にぶら下げたまま飛び出して行く勢いだった魔﨡が、やっと担いでいた錫杖を降ろした。
 その様子を、守道と吉平、宮様と毛玉までが、呆れたように眺める。

「……章親、大変だなぁ」

 心底同情したような守道に、章親はがっくりと項垂れた。
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