諸々の法は影と像の如し
「まぁ政(まつりごと)を取り仕切る人間というのは、得てして闇を纏っておるものじゃからのぅ。宮の言うことも、あながち外れではないわい」

 車の中から、魔﨡の声が聞こえる。
 万が一のため、魔﨡は宮様と一緒に車に乗っているのだ。

 元々魔﨡を歩かせると、周りの目が煩わしいというのもあるが、あの鬼は空間移動をするようなのだ。
 車の中にいきなり現れることも可能なのかもしれない。

 中に宮様一人だと危険、ということで、魔﨡が乗り込んでいる。
 こういうときは、魔﨡が女子で良かったと思うのだが。

「しっかし、折角鬼の姿が見えたというのだから、いっそのこと妖の動き出す夕刻からこちらも動けば良いものを。宮が狙いなのであれば、また鬼が姿を現そうぞ」

「……ちょっと魔﨡。考えて物言って」

 まるで宮様を餌に、鬼をおびき出そうろしているようではないか。
 が、魔﨡は、ふん、と鼻を鳴らした。

「宮とて、とっとと鬼がとっ捕まったほうが安心じゃろ? そのために多少の危険を冒すのは致し方ないことよのぅ」

「そうですねぇ。あなた方が鬼を捕まえてくれるのであれば、変に宮中で震えているよりマシかもしれません」

 嫌な予感。
 章親と守道は、お互い顔を合わせた。
 何となく、宮様はこのまま大人しく内裏に帰らないのではないか?
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