諸々の法は影と像の如し
 それに。

---ずっと嵯峨野の山奥で、宮様って立場だからそうそう友達もいなかったんだろうし。宮様が不快でないなら、お友達として付き合って差し上げるのもいいのかも---

 吉平も、そういったこともあって章親に宮様を任せているのだろう。
 とはいえ身分の違いは大きいし、女性というだけで構えてしまう章親は、こうやって同じ部屋とはいえ、隅の隅、簀子にはみ出る勢いでしか、この場に留まれないのだが。

---魔﨡はここまで緊張しなかったよなぁ。魔﨡こそ神様なんだから、立場は断然上だろうに、もう種が違うから、返って何も感じないのかも---

 そんなことを思いながら上座をちらりと見れば、宮様は寝転がって巻物を見ている。
 随分砕けた態度である。

 その少し前でごろごろしている魔﨡にしても、いい加減羨ましくなるほどの緊張感のなさだ。
 きちんと文机に向かっている章親が浮いて見える。

---変に怯えられるよりは、随分気が楽だけどね---

 女二人の肝の太さに、章親がひっそりとため息をついていると、簀子を毛玉がぽんぽんと跳ねて来た。

「章親様~。賀茂家からの資料を貰ってきましたよ~」

 言いつつ、にゅ、と一巻の巻物を差し出す。

「ああ、ありがとう」

「毛玉っ。遊ぼう」

 途端に宮様が、上座から声を掛ける。
 しきりに手招きする宮様に、毛玉は、ちらりと章親を見た。
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